Ep.2
声が出せないんだろう、叫んでも叫んでも聞いてくれる人がいないから。涙が出ないんだろう、笑ってしまうほど気がおかしくなってしまったから。もしかしたら、自分が敏感すぎたかもしれない。原因はわからない。ある日急に今までの全てがなんでもなく思えて泣きたくなった、悲しくなった。それから事あるごとにだんだん人の声を聞くことが嫌いになって話すことが嫌になって、何もない部屋に自分を閉じ込めていたいと思うようになった。
「おはよう!」 「うん……おはよ。」
またあの笑顔だ、本当に嫌い。心の奥では私のことを今すぐいじめて罵りたいと思っているんだろう。そう考えながら本に目線を戻した時、どこかから不満そうな舌打ちと大勢の笑い声が聞こえたような気がした、いつもの様に。私は去年壊れてしまった。よく感情がおかしくなり、笑ったと思えば急に泣き、好きなものは急に気持ち悪く感じる。ほら、今もそうだ。本が涙で濡れている。私は屋上へと駆け出した。いつも止まらない涙は私を狂わせる、だから私は薬を飲む。今日は3粒だ……食べたってもう自分には効かないはずなのに。
〜KIOKU〜
「友達だって思ってたの?全然違うけど……そもそもお前と仲良くなる人なんているの?」みんなで囲って私を嘲笑った。どうすることもできなくてただただ突っ立ていた。
「服装きっも……よくそんなので学校来れるよね。それに忘れ物もするなんて馬鹿じゃないの?」牛乳をかけられた。手が滑ったなら仕方がないんだよね、と感じた。
「ブス。」そう言って殴られた。あざが残ったからやり返した。親になんでそんなことをしたのか聞かれて答えられなかった。心配をかけるなと怒られた……確かにやり返した私が馬鹿だったのかもしれない。
「バイバイ。」私が後ろを向いた瞬間階段から突き落とされて、全身の感覚を失ってしまうと思った。みんな笑ってた、「階段から落ちるなんてバカじゃん。」
テストで100点を取った、何回も。その度に当たり前のことだと親に言われた。模擬試験でなぜ良い成績が取れないんだと代わりに言われた。
先生に言われた。「転校生には優しくしなさい!カルチャー(?)が違うんだからしょうがないんだ!翻訳しろと言っているだけだろ!」
転校生に爪で足を50分間刺され続けた。なのに彼は何もなかった様にたたずんでいた。私は泣いてみんなに助けを求めているのに、手を差し伸べてくれる人はいない。
永遠に友達だと言っていた友達には裏で陰口を言われ、才能もなく、希望は薄れた。親も姉妹も学校の人も聞く耳を持たず私が悪いと言った。そう……かもしれない。
受験には落ちた。なのにバカみたいに笑ってヘロヘロしているふりをして嫌われた。みんなに、もともと私は邪魔だったみたいだけれど。
〜IMA〜
だんだんハサミで自分の腕を傷つけることが多くなった。よく壁に自分から頭をぶつけることが多くなった。寝ないで勉強することが多くなった。みんなの前で笑顔でなんともない様に演じることが多くなった。屋上から飛び降りようとすることが多くなった。包丁を自分の首につける回数が多くなった。人形と話をすることが多くなった。悲しい時は笑った。
本当に本当に自分はバカだ。本当に本当に人は狂っている。
いつ自分が自分ではなくなったのかわからない。傷つく様な落書きが書かれた机、ぼろぼろに切られた洋服、泥水をかけられた体、真っ二つにおられた定規と鉛筆。もう何をしたってそれが現実……永遠に直ることはない。
柵を超えて落ちて、体が宙に浮く。朝なのに星が見える。いや、星ではない……久しぶりに見た涙だ。鈍い音とともに私は笑い、見慣れた赤い血が生暖かく私から流れ出た。