Ep.1

Ep.1

罪悪感はなかった。だって僕ではない……僕ではない何かが陽一を殺したんだ。陽一はお兄さんのような存在で僕が小さい時からそばにいてくれた。僕は小さい時に親に捨てられて、陽一の家族たちが僕を受け入れてくれた。今思い出してもやっぱりあの時はとっても嬉しかったなぁ。また僕に家族ができたんだ、僕だけのための家族が。陽一は僕と2歳離れていたけれど、どんなに忙しい時でも僕にかまっていてくれたんだ。でも陽一の親は違った。あいつらは僕の成績が落ちていくのをみてだんだんと優秀な陽一と僕を比べるようになった。それが酷くなるほど少しずつ僕の「家」という居場所が消えていった。だから中学校は寮がある特別な学校を受けた。今考えると、苦い思いがひしひしと伝わってくる。あそこでは本当に辛かった。いろんな人に蹴られたり笑われたり、呼吸するのも忘れてしまいそうだった。そんなある日僕は急に考えちゃったんだ。もし陽一さえいなければ、僕がこんな目に遭う事はなかったかもしれないと。もし陽一がいなければ僕が嫌われることも、虐められることも、そもそも存在しないのではないのか?僕は必死にその考えにしがみ付くように家へ向かった。キッチンから背を向けて陽一はテレビを見ていた。僕は足音を立てないようにしてきらりと光る何かを両手で持ちながら近づいていった。洋一まであと5m,4m,3m,2,1………。赤いドロドロとしたものが一瞬で飛び散った。僕の手に、僕の服に、そして陽一の背中にも。なんだろう……その瞬間陽一は僕の方を向いて口を動かした。「ゴメンネ」彼は確かにそう言っていた。「ヤッチャッタネ」後ろで誰かがささやいた。

僕が7歳の時だった、ふざけて車を運転をしている父の邪魔をした。そしたら急に鈍い音が車の前から聞こえた。ああそうだった。今は車にとって赤信号、止まるべきだったんだ。横を向くと父の顔は青白かった。後部者席に座っていた母が車から出て何があったのか確認をした。そこには血だらけの女性と男性が一人ずつ、そして5歳くらいの男の子が倒れていた。僕たちが驚いて立ちすくんでいると、どこからか若い男の人が出てきた。「いやー、困りましたね。すぐ近くに町がありますけど、バレるともう日の光は浴びれませんよ?」彼は不気味に僕たちに笑って見せた。恐怖で親の顔はこわばっていて、僕はただ唖然とその男の人を見つめていた。その男の人は続けて言った、「僕と交渉をしませんか?僕はさっきあの町の人たちから悪魔だとか罵られて追い出されたばかりですが、ちょうどいいものをもっていますよ。僕はこの事故をなかったことにできます。ですがその代わりに、この事をそこに突っ立ってぼーっとしている男の子以外は忘れることになります。」すると僕の親は泣きそうな火をで僕にお願いをした。「この人と交渉しよう、家族のために。陽ちゃんお願い!苦しいかもしれないけれど、知らない家族のために私たちが離れ離れになってしまうのは嫌なの!」ぼくはすぐに「コウショウとかなんとか言うものを今すぐしよう」と答えた。それしか僕たちに道はないんだ……。その瞬間辺りが暗くなった。目の前に、母さんと父さんと、死んだように見えた5歳ぐらいの男の子がいた。「陽一今日からこの子はあなたの弟よ。」笑顔で母と父はいった。

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